ども、こんにちは。高インボムです。
そんなこんなで、前回のブログ『楽器演奏は最強のアンチエイジング!?』の中で、「楽器演奏には様々な効能がある」というお話をしました。
その中の一つに、「瞑想と同様の効果を得られる」というものがあります。
実は近年の科学的な研究で、楽器演奏には脳と心を整える作用があることがわかってきました。
いわゆるマインドフルネスというやつですね。
中でも、一見地味に思われがちな「基礎練習」に特にその効果が高いそうです。
というわけで今回は、楽器の基礎練習とマインドフルネスの関係について考察していきます。
そもそもマインドフルネスとは?
近年よく聞くマインドフルネスという言葉。
その響きから直訳的に解釈すると「思考でいっぱいの状態」にも思えますが、そうではありません。
マインドフルネスは英語表記では「Mindfulness」となり、元は仏教用語の「サティ(気づき)」を訳した言葉で、「注意や気づきで満たされている」というニュアンスがあります。
つまり、マインドフルネスとは「今この瞬間に100%意識を向けている状態」を表す言葉なんですね。
人間はついつい過去や未来に意識が向いて「心ここにあらずの状態」になってしまうことがあり、そういう時には後悔(過去)や不安(未来)に心が支配されることも少なくないかと思います。
マインドフルネスとは「今に集中している状態」「今を生きている状態」なので、そういう状態で過ごせると心が後悔(過去)や不安(未来)に支配されることもありません。
そして、「今この瞬間」に意識を戻すためのトレーニングとして代表的な手法が「瞑想」です。
瞑想は二種類ある
一般的に瞑想と聞くと、坐禅のような「座って目を閉じる」というイメージが強いかもしれません。
しかし、瞑想には大きく分けて『集中』と『観察』という二つのスタイルがあります。
脳科学的に見ると、それらの行為が前頭前野(理性)、扁桃体(感情)、島皮質(全身のセンサー)といった脳の各部位に作用するのですが、それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 集中瞑想(サマタ瞑想)
集中瞑想は、特定の対象だけに意識を向け続けて思考のノイズを消していく瞑想法で、雑念が浮かんでも再び対象に意識を戻すということを繰り返します。
一つの対象に意識が集中することで脳の司令塔である「前頭前野」が活性化。
その結果、集中力や判断力が研ぎ澄まされていきます。
また、感情をコントロールするブレーキが効きやすくなり、不安やストレスを司る「扁桃体」の過剰な反応を抑えてくれます。(前頭前野によるトップダウンの調節が強まる状態)
ちなみに、特定の対象に意識を止めることから「止(し)の瞑想」とも言われます。
② 観察瞑想(ヴィパッサナー瞑想)
観察瞑想は、今この瞬間に起きていることを「良い・悪い」とジャッジせずありのままに観察する瞑想法で、湧いてくる思考や体の感覚、聞こえてくる音など、意識に現れるものすべてに「気づき」を向けていきます。
これにより内受容感覚(身体の内部のコンディションを感じる機能)を司る「島皮質」や前頭前野の一部が活性化。
脳が自分の状態を正確にモニターできるようになるので、結果としてメタ認知の能力が高まります。
また、感情や思考を一歩引いた視点から眺められるようになり、ネガティブな反応に飲み込まれにくくなります。
集中瞑想を止の瞑想と呼ぶのに対し、こちらは「観(かん)の瞑想」とも言います。
楽器演奏はハイブリッド瞑想
そしてここからが本題です。
実は、楽器の基礎練習は、この集中瞑想と観察瞑想を掛け合わせた『ハイブリッド瞑想』と言えるんです。
例えば、「メトロノームに合わせて一定のリズムや音色をキープする」という、ドラマーやミュージシャンにはお馴染みの練習を分解してみると、
- 集中:メトロノームの音を聴き、一定の音を出し続ける。
- 観察:「今、少しリズムが走ったな」「今、バスドラがうまく踏めなかったな」など、音の変化や身体の感覚をキャッチする。
といった感じで、「狙った音を出す(集中)と同時に、出た音を聴いて修正する(観察)」という作業を繰り返しています。
つまり、楽器の練習中というのは「特定の対象に没頭しながら、同時に全体を俯瞰している」という、脳にとって非常に高度な作業をしている状態なんです。(脳科学的には、前頭前野で集中をコントロールしながら島皮質で全身のセンサーを起動させている状態)
この「没頭しながらも俯瞰している」という状態が、集中瞑想と観察瞑想を掛け合わせたハイブリッド瞑想になっているというわけですね。
ちなみに近年の研究では、この『集中』と『観察』が共存している状態はマインドフルネスの理想的な姿だと言われています。
瞑想効果を高めるためのポイント
楽器の練習による瞑想の効果をうまく発揮するには、「無意識を有意識にする」や「ジャッジをしない」といったことがポイントになります。
「無意識を有意識にする」というのは「自動操縦モード(オートパイロット)からの脱却」と言い換えることもでき、例えば普段は何気なく動かしている手足指の動作を一つ一つシビアに意識したり、スティックのリバウンドやアクセントのコントロールをミリ単位で意識する、といった感じです。
また、「ジャッジしない」というのはマインドフルネスにおいて最も重要視される部分で、例えば演奏中にミスやズレが発生した時に、「今のはダメだ!」と自分を責めるような捉え方をするのではなく「あ、今ミスったな」と冷静に事実だけを捉える、といった感じです。
それと、練習メニューの難易度を「簡単すぎず、難しすぎないもの」にするというのもポイントです。
例えば、雑念が浮かびやすい場合は「少しだけ難しい練習メニュー」を取り入れて、俯瞰するのが難しいと感じる場合は「シンプルで反復性がある練習メニュー」にすると、『集中』と『観察』のバランスが取れて瞑想の効果が発揮されやすいです。
少し難しいメニューは自動化のプロセスが解除されて意識的な動作が必要になる(=集中を必要とする)し、シンプルで反復性があるメニューは予測可能性が高まるのでメタ認知しやすくなる(=観察しやすくなる)、というわけです。(簡単すぎると「集中」が消え、難しすぎると「観察」が消える)
まとめ
というわけで、今回は楽器演奏とマインドフルネスの関係やその効果について考察してきました。
ヨガや太極拳などを「動く瞑想」と表現することがありますが、楽器演奏にも同様の効果があり、特に基礎練習はその効果が高いとのことでした。
改めて、楽器演奏とマインドフルネスについてまとめておくと、
- 瞑想には「集中瞑想」と「観察瞑想」の二つがある
- 基礎練習は「集中」と「観察」を同時に行うハイブリッド瞑想である
- 瞑想効果を高めるには「細かい部分にまで意識的になる」「ジャッジをしない」がポイント
- 練習メニューが簡単すぎると「集中」が消え、難しすぎると「観察」が消えるので、適切な難易度を選ぶことで二つのバランスが取れて瞑想効果が高まる
今まで基礎練習を楽しめなかった人やメトロノーム練習が苦手と思っていた人も、「脳と心を整える効果がある」と知ると、クリック音が心地よく感じられてくるかもしれません(笑)。
僕も精進していきます。
では、本日はこれにて。
サラバオヤスミマタアシタ!
