ども、こんにちは。高インボムです。
そんなこんなでありがたいことに、最近はYouTubeきっかけでドラムレッスンの問い合わせをいただくことも増えてきて、さらにはモーラー奏法やカラダの使い方のレッスンを希望されることも多くなってきたので、
今の時点で僕が思う『カラダのあり方・動かし方・使い方』に関すること、それを取り入れるために必要なこと、を書いてみようかなと思います。
概念を書き換える
レッスンでカラダや身体操作にまつわる色んな話をしていると、
「今まで思ってたのと真逆の考えです」
「こんなこと考えたことなかったです」
なんて反応がくることがとても多いです。
確かに僕も初めてモーラー奏法やそれに通じる身体操作理論に出会った時、同じように思っていました。
で、レッスンでそういうやり取りを繰り返したり、自分のことを思い返したりしているうちに、モーラー奏法も含めたカラダのレッスンにうまく取り組んでもらうためには、まずはカラダのあり方・動かし方・使い方についての概念を自分の中に取り込むことが大事なんじゃないかと改めて思うようになってきました。
もっと言うと、カラダに関する自分の中の概念をリセットして書き換えることと言えるかもしれません。
なぜなら、モーラー奏法や人体力学に関する技術や理論が、一般的に定着しているカラダに関する常識やイメージとは真逆のものだからです。
その中のいくつかを以下に書き出してみます。
筋肉ではなく骨格で動かす
モーラー奏法や人体力学に関する技術や理論で、カラダに関する一般的な常識やイメージとは真逆なものは色々あるのですが、動きに関する部分の一番大きな違いは『筋肉メインではなく骨格メインで動かす』という部分になると思います。
これは、身体操作についてとても重要な概念で、『カラダにブレーキをかけない』ことにも繋がっていきます。
一般的には、カラダは筋肉で動かすというイメージがあると思います。
例えば、腕を曲げたり伸ばしたりするような、伸縮がメインの動きです。
これはどちらかというと直線的な動きで、乗り物に例えると、一本の道を進んで止まって方向転換して進んで止まって方向転換して…、と往復するような動き。
つまり、アクセルとブレーキを交互に使うような動き(場合によってはブレーキをかけながらアクセルを踏むような動き)になっています。
ちなみに筋トレの動きは基本的にはこれになります(だから負荷がかかって鍛えられるわけです)。
一方、モーラー奏法やそれに通じる身体操作理論では、骨格や腱を使って動かすというのが基本的な考え方になります。
例えば、腕をグルグルひねったり回したりする、回転運動や円運動がメインの動きです。
環状線をグルグル回り続けたり8の字を描き続けるような、止まる必要のない動き。
流線的でしなやかな動きになり、動作の中でブレーキをかけることはありません。
ドラムに限らず、歌や楽器、ダンスやスポーツに格闘技の世界でも、一流や達人と呼ばれるような人ほどこのような動きになっていることが多いです。
全身の脱力と連動
カラダの動きにブレーキをかけないための大前提として、『全身の脱力(リラックス)』が必要になります。
全身の脱力(リラックス)については最初から理解・納得されることがほとんどなのですが、その度合いを示すと、多くの方は「そんなに力を抜くんですか!?」という反応になります。
文章では説明しづらいのですが、皆さんが思ってる以上にメチャメチャ脱力するって感じです。
時々、「少しは力を入れますよね?」とか「どこに力を入れればいいんですか?」と言った質問を受けますが、僕の答えは「どこにも力は入れません」となります。
で、これまたややこしいのですが、『脱力する』というのは『力を抜くこと』であって『力を無くすこと』ではありません。
僕も昔これを勘違いしていて、リラックスしようとすると力も出なくなるようになってたのですが、
あくまで抜くのは力であって、カラダの芯というか柱というか、そういったものは残ってるイメージです。
また、脱力することで『全身が連動する』ようにもなり、しなやかでスムーズな動きへと繋がっていきます。
しなやかな動きをするためには脱力が必要になるのは何となくお判りいただけると思うのですが、それが全身の連動にもつながるというのがポイントです。
鍛える前に今あるものを最大限に活かす
近代的なスポーツ理論では『カラダは鍛えるもの』という考え方があると思いますが、人体力学的な考え方では鍛える前に『今あるものを最大限に活かす』という概念が重要になります。
僕も含めて、ほとんどの現代人はカラダの機能や能力を100%有効に発揮できていないでしょう。
以前、『カラダの使い方セミナー』というものを開催した時に、足にちょっと細工をするだけで体幹力がアップする(正確には復活する)という実験をしたのですが、見事に全員が体幹力アップ。
で、当たり前ですが体験者の身体能力や筋力がその瞬間に上昇したわけではありません。
使えていなかった部位を意識することで本来の力を発揮できるようにしただけです。
こんな感じで、カラダを鍛える前に、今の自分のカラダをより有効に活かせるようになる事は身体能力の向上を考える上でとても重要だと思っています。
そして、自分のカラダを最大限に活かすためには、『法則と構造を理解すること、それらに逆らわずに利用すること』が大切だと僕は思っています。
例えば、重力に逆らわずにうまく利用するとか、関節の構造をよく知ってそれに沿った動きをするとか、です。
少し話が逸れますが、類稀なる身体能力で驚異の戦績を修める格闘家・朝倉未来氏は「筋トレは一度もしたことがない」とインタビューで言っていたり、
野球界のスタープレイヤー・イチロー氏は「筋トレをやめてスイングスピードが上がった」「本来のカラダのバランスを崩しちゃいけない」といったことを述べていたりと、
筋トレブームの現代で、カラダを鍛えるということを肯定していないトップ選手がいるという事実もあります。
こういった方々は、カラダや運動力学にまつわる法則や構造を感覚的に理解していて、それらをうまく利用できているのだと思います。
常識を捨てて新たな可能性を
モーラー奏法や人体力学における身体理論は他にも色々ありますが、一般的な常識やイメージとは根本的にはほぼ全てが真逆になるので、その理論や概念を取り込んで活用するには『自分の中の常識を捨てる』という事が必要になるかと思います。
思えば僕が初めてモーラー奏法を知った十数年前、一部のドラマーやスクールを除いた大半の場では非常識なトンデモ論として扱われていた記憶があります。
近年は認知が広がりその扱いやイメージが変わってきた感じですが、ドラムや音楽に限らずどんな事でも、非常識の中には自分が知らない可能性があるし、天動説から地動説になったように常識が覆った例なんて歴史上山ほどあるわけで。
新たな可能性を見つけて自分のものにするためには、自分の中の常識を捨てる必要があるなと事あるごとに感じます。
昔、日本のトップドラマー・村上ポンタ秀一さんが雑誌のインタビューで「積み上げた経験を捨ててまっさらの更地にできる奴だけがさらに成長していける」といったことを述べていたのですが、この言葉は真理を突いていると思います。
僕もまだまだ研究中ですが、僕のような華奢な人間でもラクにドラムを演奏できるモーラー奏法や人体力学的な身体操作。
常識やイメージにとらわれずに、この魅力を是非多くの方に知ってほしいと思っています。
ちなみにカラダのことを学ぶには、ヨーヨーや竹馬に縄跳びなど、子どもの頃にやってた遊び(伝承遊びと言うらしいです)にもヒントがいっぱいあります。
こんな話をレッスンですると「え??」ってなることが多いけど、かなり本気で言ってます(笑)。
その辺の話はまたの機会に。
てなわけで、本日はこれにて。
サラバオヤスミマタアシタ!