【アドラー心理学の誤解】課題の分離は手段の一つであって目的ではない、という話。
アドラー心理学の話になると必ずと言っていいほど出てくる定番のキーワード、『課題の分離』。実はこれ、アドラー本人が提唱したものではないんですね。実際に、アドラー自身の著書には『課題の分離』という言葉やそれに類する概念は全く出てきません。/アドラー心理学には、ベースとなるいくつかの理論と様々な技法がありますが、それらを支える土台として『共同体感覚』という概念があります。『共同体感覚』とは何なのか。アドラー自身は『共同体感覚』のことを『所属感』『信頼感』『貢献感』の三つの要素で説明しており、現在のアドラー心理学ではそこに『自己受容』を加えた四要素で説明される事が多いかと思います。/『課題の分離』とは相手を突き離してバラバラになるためのものではなく、もちろん誰かを支配したり裁いたりするためのものでもなく、お互いが健全に繋がり合うためにまずは一人一人が自立しよう、といったものなんですね。つまり、『課題の分離』とは『共同体感覚』に向かうための手段の一つ、というわけです。/「個々が自立した上で全体の一部として生きる」という考えは、古代ギリシアのストア派哲学や江戸時代の日本で記された葉隠でも説かれていますし、昔の東洋思想も同じような事を言っている気がします。場所や時代が違っても、人間の本質を突き詰めていくと最後は同じところに辿り着くのかもしれないな〜なんて思う今日この頃です。